驚いて、バッグがおじさんの顔の上に落ちた。


そのはずみで、熟睡していたはずのおじさんの目が開く。


うつろな視線があたしを捉えた。


慌てふためいて振り返ると、そこには懐中電灯を持った警官の姿。



――ヤバイ、パクられる。



思い浮かんだのは、失敗して制裁を加えられるであろう奈央でもなく。


お世話になっている双葉園の職員でもなく。




……お姉ちゃん。



こんなことがお姉ちゃんの耳に入ったら。


犯罪を犯す妹を持ったと、せっかく築いた"家族"に追い出されるかもしれない。


今までどんなに痛い思いをしても我慢してきたのに、ここで捕まるなんてありえない。


あたしは走りだした。