「あたしね、小さいときに両親が死んじゃって、ずっと施設で育ったの」


テルさんの視線も感じた。


「小さいころはいじめとか偏見とか。そんな中で生きてきた。今でも……施設では毎晩のように暴力を振るわれて。

結局あたしはそこから逃げられないし、耐えるしかなかった……」


「………」


「そんなときに凌牙に出会って。居場所を作ってやるって言われて、ここに連れてきてもらったの」


「……兄貴が……?」


和希の目から、少しだけ殺気が消えた気がした。


「うん。まだ出会ったばかりだけど、不思議と凌牙には何か引き寄せらるものがあったの……。

この人は、信じられるかもしれないって」


キスされた、なんてことは言えないけど。