カナの記憶が保たれている領域が不明な時、わたしをミヅキだと認識したカナに、彼女がもうこの世に存在していないという事実を告げてしまった時のリスクは、恐ろしいものだったらしい。


 カナの中にもしもミヅキの存在しか残されていないのだとしたら、それは眠りから覚めたばかりのカナを孤独にすることになるからだ。


 ミヅキは、カナの恋人。


 やっと目覚めて、やっと会うことができると思った彼女が1年以上も前に亡くなっていたんだと知ったら、どうなるだろう……。


 下手をしたら、最悪の事態になりかねない。


 それを想像したら、全身が震えるほどの恐怖が走った。


 そこでわたしがとっさに言ってしまったあの言葉に、先生は救われたと言う。


 でも、正直、あの時言った言葉が正しかったのかは、今もわからない。


 きっと誰にもわからないことだと思うけど。


 謝罪はきっと、わたしを不用意に傷つけたことだけじゃなく、あの時言った言葉に対しても言っているんだと思う。


 だって、これでわたしは戻れなくなったから……。