「ああ。でも、今日は通院。

終わった後、病棟に寄ってるはずだから迎えに行くんだ」

「絵本の読み聞かせだったっけ?」

「そ。後、よく折り紙折ったり、工作したりしてる」



ハルは小さい子が好きだ。

入院中でも調子がいい時は、よく小児科の大部屋やプレイルームで、子どもたちと遊ぶ。

あと通院が終わった後とか、長期の休みの時とかにも、病棟に顔を出すんだ。



そういうボランティアもあるらしいけど、ハルはたぶん、ボランティアだと思っていない。

小さい頃、同じように、優しいお姉さんに遊んでもらってすごく嬉しかったから、自分もやるんだって言う。



「陽菜ちゃんだっけ。いい子だよな~」

「だろ?」



思わず顔がゆるむのを見て、淳は笑う。

オレは子どもの頃から、いつだってハルのことばっかりだったから、以前はよくからかわれていた。

会わせろ会わせろって、あんまりうるさいから、去年一度会わせたら、それからはからかわれなくなった。



「じゃ、また来週!」

「ああ! またな!」



オレは淳に手を振ると、ペダルをグッと踏み込んだ。