ハルは走れない。

早歩きもできない。

こんなところで、お姫様抱っこは論外だろう。

時間は余裕を見た方が良い。



オレは、スッと立ち上がり、それから、ハルに手を貸すふりをして、ハルの唇に素早くキスをした。



ハルが驚いたように、オレを見返した。

でも、ハルは怒らずに、もう、と小さい声で言うと、まるで花が開くようにふわあっと笑った。



「ハル、大好きだよ」

「……わたしも。カナ、大好き」



木漏れ日に照らされたハルの笑顔が、あまりにキレイで、

つないだ手のぬくもりがたまらなく幸せで、

公園の木立の中を歩きながら、

オレの心は、かつて感じたことがないくらいの、幸福感で満たされていた。


(完)