一ヶ谷くんは、もう来ない。 わたしは、今日も、カナと一緒に裏口から教室までの廊下を歩く。 並んで、手をつないで、ゆっくりと歩く。 「カナ」 「ん? どうした?」 返ってくる優しい声と、カナの笑顔。 それが幸せで、本当に幸せで、思わず笑顔がこぼれ落ちる。 「……ん? ハル?」 カナの言葉に答えず、そっと自分の腕を、カナの腕に絡めた。 カナが嬉しそうに笑った。 また、穏やかな日常が戻って来た。 わたしが願ったような、穏やかで暖かい、ひたすらに優しい時間が。