「……陽菜ちゃん、ごめんなさい」



一ヶ谷くんは、ずいぶんと長い沈黙の後、静かにそう言って深々と頭を下げた。

素直に謝られると、反射的に「いいよ」と言いそうになる。

でも、「ごめんなさい」だけじゃ、一ヶ谷くんが何に対して謝ったのかが分からない。



きっと、例の女の子のことだとは思う。

お兄ちゃんがわざわざ来るようなことじゃないのにね……って言ったら、カナが教えてくれた。

よその学校の子が忍び込んだんだよね?

あの時、あの子と一緒にいた一ヶ谷くんは、しきりに、わたしから目を反らしていた。



「何に、謝っているの?」



さすがに憤りを感じていたけど、それでも努めて優しく問いかけると、一ヶ谷くんはゆっくりと下げた頭を元に戻した。

それでも、まだ目は合わせてくれなかった。