「裕也……くん」

「ん? どうした?」



話しながら、ベッドの上にいるはずの身体がどこまでも沈み込み、ずぶずぶと闇の中に入り込んでいくような錯覚におちいる。



「……のね、お願いが……あるの」



今、話さなきゃいけない気がしてならないのに、何だかろれつが回らなくなってきていた。



「ん? なに?」

「……たしが、……だ……と」



裕也くんが、額の汗をやさしくぬぐってくれた。




わたしが死んだ後、カナの話、聞いてあげて。

カナの力になってあげて。




そう言いたかったのだけど、もう、ちゃんと声が出ていたのかも分からなかった。



こんなこと、裕也くんにしか頼めない。



裕也くんが、何か言っているのは聞こえたけど、それが、「もう一回言って」なのか「分かった」なのか、「おやすみ」なのかも、もう分からなかった。

意味の取れない裕也くんの言葉を聞きながら、ゆっくりと、わたしの意識は闇に沈み、やがてプツリと途切れた。