バタバタと慌ただしい足音の後、「お待たせ」と差し出された吸い飲みから、ゆっくりと水を飲む。
ただの水が、冷えてもいない室温の水が、とてつもなくおいしかった。
慌てて飲んでむせたりしないよう、ゆっくりと飲み干して、ようやく人心地ついた。
「ごちそう、さま」
ようやく、しっかり目を開けて裕也くんの顔を見る。
空になった吸い飲みを受け取りながら、裕也くんはわたしのおでこに手を当てた。
その仕草が、お医者さまっぽくなくて、白衣とのギャップがどこか不思議だった。
「おかわりは?」
「も、いい」
吸い飲みをサイドテーブルに置き、裕也くんはポケットから聴診器を取り出した。
胸に当てた聴診器をゆっくりと丁寧に、裕也くんは動かしていく。
「雑音、聞こえた?」
そう聞くと、裕也くんは苦笑いを浮かべた。



