「陽菜ちゃん、氷まくらかえようね」
聞き覚えのある声が耳に入ると同時に、頭を持ち上げられた。
そっと下ろされた頭の後ろに、冷たい氷まくらの感触。
気持ちいい。
ふうっと思わず吐息がもれた。
「あれ? 陽菜ちゃん、意識ある? ……陽菜ちゃん!」
枕元の電灯がつけられた。
返事をする元気なんかなかったけど、呼ばれたので仕方なく、うっすらと目を開けると、裕也くんの心配そうな顔が目に飛び込んできた。
「陽菜ちゃん。陽菜ちゃん、分かる?」
「……ゆ、や……く」
のどがカラカラで、まともに声が出なかった。
いざ、人の顔を見たら、なぜ今まで我慢できたのか不思議なくらいで、飛び出す言葉は一つだった。
「……ず、ほし…」
「ん?」
「お……み、ず」
「水? ちょっと待ってね」



