13年目のやさしい願い



「陽菜ちゃん、氷まくらかえようね」



聞き覚えのある声が耳に入ると同時に、頭を持ち上げられた。

そっと下ろされた頭の後ろに、冷たい氷まくらの感触。



気持ちいい。



ふうっと思わず吐息がもれた。



「あれ? 陽菜ちゃん、意識ある? ……陽菜ちゃん!」



枕元の電灯がつけられた。

返事をする元気なんかなかったけど、呼ばれたので仕方なく、うっすらと目を開けると、裕也くんの心配そうな顔が目に飛び込んできた。



「陽菜ちゃん。陽菜ちゃん、分かる?」

「……ゆ、や……く」



のどがカラカラで、まともに声が出なかった。

いざ、人の顔を見たら、なぜ今まで我慢できたのか不思議なくらいで、飛び出す言葉は一つだった。



「……ず、ほし…」

「ん?」

「お……み、ず」

「水? ちょっと待ってね」