最後の記憶は、救急車の中だった。
「ハル、後少しで、病院つくからな。早く楽にしてもらおうな」
カナの声は、優しく落ち着いていて、思い出すと、なぜか悲しくなった。
たまらなく、カナに会いたかった。
息苦しい。
熱い。
……我慢するくらいしか、わたしにできることはなかったから、また目をつむった。
次に目が覚めた時には、少しでも楽になっていたらいいな、とそう思いながら。
だけど、身体には耐えがたい程に熱がこもり、酸素マスクをつけていてもなお息苦しくて、のどはカラカラに渇いていて……。
目をつむっても眠れずにいると、ふいにドアが開く音がした。
薄く目を開けると、廊下の薄明かりが病室内に差し込むのが見えた。
いつもの見回りだと思って、そのまま目を閉じる。
足音が静かに近づいて来た。



