「瑞希ちゃんが、どうしても話したいって」



看護師さんに、躊躇いがちに声をかけられた。

まだほんの子どものわたしが、これから起こるかもしれない事態を理解しているのか、受け止められるのか、測っているのだと思った。



物心がついた頃から、病院はわたしにとって、第二の家と言えるくらいに、なじみの場所だった。

特別室という、少しだけ隔離された場所。

だけど、総合病院に長く入院すれば、人の死には何度も出会う。



瑞希ちゃんは、今、死の淵にいる。



子どもだったわたしにも、それは、ひしひしと感じられた。

そして、瑞希ちゃんが、そこから戻ってこられるかは、わたしには分からなかった。

ただ、戻って来てと、心から願うしかできなかった。