「オレ、もしそこにいたのが、じいさんでも、ばあさんでも、おじさんでも、おばさんでも、小さい子どもでも、同じことしたよ?」

「そ、そんな優しい叶太くんが……」

「好きとか、気軽に言わないでね」



篠塚が言葉を飲み込んだ。



「ねえ、あんたが好きなのって、オレの何?」

「え?」



篠塚の顔に動揺が浮かぶ。

……正直者。

堪えきれず、口の端から笑いがもれる。



「もし助けてくれたのが、冴えない中年の独身男でも、あんた、好きって言う?」

「え?」

「だって、命がけで助けてくれたんだぜ?」

「そ、……そりゃ、そうだけど……」



その場しのぎでも、冴えない中年男でも良いって言えないんだ。

底が浅すぎる。

オレはわざとらしく、ため息を吐いた。