何をやっても逃げられないと、ようやく観念したらしい篠塚は、
「自分で歩けるから、離してっ!」
と斎藤をにらみつけ、片手を離させてベッドサイドまで歩いてきた。
だけど、そこまで。
ハルは話があるから聞いてあげてと言ったけど、篠塚は何も言わない。
どうしたものかと思っていると、ハルが静かに口を開いた。
「自分で言えないの?」
「……っるさいなぁ!!」
甲高い声が不快な空気を醸し出す。
顔は割とキレイな部類だろう。
が、目元に、口元に、顔つきに、性格の悪さが見て取れるような女だった。
「じゃあ、わたしが代わりに言うね?」
ハルは自分をにらみ続ける篠塚の表情など気にせず、至って冷静にそう言うと、オレを真っ直ぐに見上げた。



