「ん? どうした?」
「カナ、あの子、誰?」
「あ。この前の交通事故で助けたヤツ」
「……そっか。だから聞き覚えがあったんだ」
「え? 何に?」
「声」
ハルは、それからオレの目をじっと見た。
「あのね、あの子、カナに話があるんだって」
それにオレが答える前に、篠塚が大声を上げた。
「ちょっと! あんた、何言ってんのよ!」
両手首を斎藤に捕まれたまま、憎々しげにハルを見る篠塚。
だけど、ハルはそれをムシしてオレに言った。
「カナ、あの子の話、聞いてあげて」
そう言うと、ハルは斎藤に目を向けた。
「連れて行けば良い?」
「……うん」
ハルは少し迷ってから、そう答えた。



