「え?」



何を言われたか分からない……って顔をしながらも、斎藤は反射的に篠塚の手首を掴んでいた。



「離してよ!」



篠塚が逃れようと、斎藤を反対の手で叩いていたが、バスケ部エースの握力だ、そう簡単に外れる訳がない。

暴れたせいで、反対の手首も捕まえられて、篠塚の動きは完全に封じられた。

志穂が一ヶ谷を横目に見ながら、スッと保健室のドアを閉めた。

それを見て観念したのか、一ヶ谷は大きなため息を吐いた。

こっちは、逃げる気配はなさそうだった。



「……で、これ、どうすれば?」

「斎藤くん、ありがとう。ちょっと待ってね」



ハルが斎藤に礼を言いながら、オレの腕を引いた。