「………あ。ごめんなさい」



慌ただしく今度は前を向き、先生の方を見た。

教卓に立っているのは、数学の先生。



「大丈夫か?」



先生の目には、怒りはなかった。

むしろ、その目の中に心配がかいま見えて、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

授業中にボーッとしていたのだから、叱られたっておかしくないのに……。



「大丈夫です。……あの、ごめんなさい、聞いてなくて。何番でしょうか?」



聞くと、隣の席の男の子が、自分の教科書をわたしの方に寄せて、指さしで教えてくれた。

わたしが開いていたページから、5ページも進んでいた。

ノートも真っ白。



だけど、……よかった。

予習してある。



答えると、先生は笑顔で「正解」と言ってくれた。