不機嫌に口をとがらせたオレを見て、兄貴は苦笑い。

それから、真顔で一言。



「一応、気をつけろよ?」

「何を?」

「家も名前も割れてるから」

「……はあ? 何があるって言うの?」

「いや、熱烈アプローチが始まるかもよ?」



オレをからかうように、にやにや笑う兄貴。



「カンベンしてよ。オレさ、そういう面倒なの、正直、うっとうしいとしか思えない。

ハルのことだけで、頭いっぱい。も、ハルのこと以外、考えられないし」



オレの言葉に、兄貴は吹き出した。



「そうだな。おまえが誰かに誘惑されるなんて、考えるだけ無駄だな」



「そう。オレ、ハル一筋だから」



兄貴はまた面白そうに笑った。