「ハル、おめでとう」



と、カナがわたしのグラスに、コツンと自分のグラスを当てた。

わたしのグラスにはオレンジジュース。

カナのグラスには……、



「ねえ、カナ、これなあに?」

「ふふふ。……ビール」



とカナが嬉しそうに言った。



「え? ダメでしょ?」



思わず言うと、カナは笑って答えた。



「ハルは生真面目だなぁ~。今時、高校生ならビールくらい……」



と、そこまで言ったところで、カナはふぅと小さくため息を吐いた。

わたし、相当怖い顔をしていたみたい。



「冗談だろ」



そうして、指で、コツンとわたしの頭を叩いて、



「ノンアルコールビール。……親父、うるさいんだよな、そういうとこ」



と笑った。



「ハルだって飲めるよ、これなら。……飲む?」

「……美味しいの?」

「どうだろうな?」



カナにグラスを渡されて、一口飲もうとして、思わず吹き出しそうになった。

なに、これ。



「あはは。ダメだった?」

「……変な味」



顔をしかめるわたしの頭を、子どもにするみたいによしよしとなでてから、カナは言った。



「早く、本物飲みたいな」

「……わたしは、いらないかも」



そう言うと、またカナは笑った。



お酒は二十歳から。



そんな言葉が、頭に思い浮かぶ。



お酒を飲める年まで、わたし、生きていられるんだろうか?