「陽菜ちゃんからは、ぜったいよ、おじさまって頼まれたんだ」
「え?」
「だから、残念だけど、あきらめてくれ」
親父はいかにも申し訳ないという雰囲気で言う。
けど、本気で悪いなんて思っていないのは明らかだ。
「おい、親父!?」
ちょっと待てよ!!
「だって、おまえ、言ってこなかったじゃないか」
そ、そりゃそうだけど!!
そんなの例年のことで、親父だって、去年は、いつもみたいに頼んでおけばいいのかって聞いてくれたじゃないか!
「やっぱり早い者勝ちだよな、こういうのは」
「でも!!」
「しかし、陽菜ちゃんは相変わらず、生真面目だな」
と親父は目尻を下げて、楽しげに笑う。
ハルのことを話す時、親父はやたらと幸せそうな顔になる。
そう。
うちの親父もお袋も、ハルのことが大好きだ。
優しくって穏やかで、抜群に性格がいい上に、愛らしく整った顔立ちのハル。
女の子が欲しかった2人が、ハルを好きにならないわけがない。
だけど、それとこれとは別問題だ。