「そう。
……だって、今までに何回も、胸を切り開いて心臓の手術をしたんでしょ?」
「う、うん」
「そっちのが、ただの捻挫なんかより、ずっと痛いじゃん?」
「そうかな」
「そう! ぜったい、そう! こんくらいの捻挫なら、一週間もすれば治るんだからさ」
「そっか。よかった」
わたしが笑顔を見せると、毒気を抜かれたみたいに一瞬真顔になり、
それから田尻さんも、ふわっと笑顔を浮かべた。
「お人好し」
わたしが何度も、心臓の開胸手術をしているということ、
学校に、そんなことまで知ってる人はほとんどいない。
じゃあ、なぜ、そんなことを田尻さんが知っているのかというと、以前、同じように体育で並んで見学中に聞かれて答えたからだ。
その時も、田尻さんは足首を捻挫していた。



