去年は、いろいろあった。



思い出すのが辛くて、頭の片隅に追いやられたその記憶は、

本当に、わたしにとっては、いろいろとしか言いようがなくて……。



でも、一時期、怖くて仕方なかった田尻さんは、今ではもう仲の良い友だちの一人。



「何? わたし、変なこと聞いてないよね? ……大丈夫?」



田尻さんの方を見たのに、返事をしないまま、ぼんやりしていたら、

田尻さんが心配そうに、わたしの顔をのぞき込んだ。



「牧村さん?」



肩に手を押かれて、ようやく、わたしはハッと意識を目の前の田尻さんに戻した。



「ご、ごめんっ」

「別にいいけど」



慌てて謝ると、田尻さんは、ちょっと怖い顔で肩をすくめた。



今では、この怖い顔が、わたしを心配してくれていた印だとちゃんと分かる。

去年、わたしに詰め寄った時とは、ぜんぜん違う表情。