「しょうがないなぁ~。高いよ?」
「うん。何でもやるから言って!」
「やだなぁ。もう。冗談に決まってるじゃん」
呆れたように言う志穂に、先輩が問いかける。
「そんなにスゴイの? 一ヶ谷って」
「割とスゴイですよ。押しの強さが尋常じゃないって言うか……。
叶太くんがどんなに牽制しても、逃げるどころか立ち向かって来ますからね。
諦める気配もないし」
「へえ」
「気になります?」
「ああ。なるね。寺本、ハルちゃんのこと、しっかり守ってあげてね」
「はいはい」
先輩がニッコリ笑っていう言葉に、志穂も笑いながら返事をした。
この2人が付き合っていると聞いてから、数ヶ月。
だけど、志穂は相変わらず敬語で「先輩」だし、羽鳥先輩も「寺本」。
まるで付き合っているようには、見えない。
だけど、2人の間にある見えない絆のようなものが、何となく感じられた。
先輩からハルへの好意が減った気がしないのが、不思議ではあったけど。



