「ハルちゃん、やっぱり、そっちに寝かせた方がよくない?」



来客が帰り、ようやく静かになった病室。

羽鳥先輩がハルを心配そうに覗き込みながら、そう言った。



「……ですよね?」



ベッドから降りてハルの後ろに回ると、先輩が言った。



「ボクがやろうか?」

「え!? いいですよ」

「でも、広瀬、ケガ人だろ?」

「やめてくださいよ。たんこぶくらいで」

「いや。それも」



と、先輩はオレの手の甲を指さした。



「ああ。すり傷ですよ、ただの」



ガーゼは当ててもらってるし、すり傷という程には軽くないけど、これくらいなら、子どもの頃、転んですりむいた膝小僧のケガとそう変わらない。