おじさまとおばさまは、元々、今日は夫婦同伴でお出かけのはず。

泊まりの予定だったけど、昨日、ムリして一度戻ってきたんだ。

お仕事だし、来られるとしても夜なんじゃないかな?



「広瀬、こちらの方も、そうは言ってもやっぱりご両親にあいさつはしなきゃすまないだろ?

自宅の電話番号か、お父上の携帯の番号をお伝えしたら?」

「……じゃ、そうしましょうか」



カナが「ごめんね」と、小さな声でささやいて、つないだ手を離した。

それから、



「ハル、書くもの借りるよ」



と言う声の後、ゴソゴソ探る音がした。



わたしのハンドバッグ?

いいよ。なんでも、自由に使って。



そう思いながら、

手のひらにカナのぬくもりがなくなったのを、ちょっとだけ寂しく感じながら、

わたしの意識は、また闇に飲まれていった。