「本当に、ありがとうございました」
「あなたのおかげで、娘はかすりキズ一つしませんでした」
「なんてお礼を言っていいのか……」
「娘の代わりに、あなたにそんなケガをさせてしまって」
「ほら、まゆ、おまえもお礼を言いなさい」
「ありがとう!」
バタバタした空気と、
矢継ぎ早に言われるお礼の言葉。
大人の男の人、女の人の声。
それから、ちょっと甲高い女の子の声。
きっと、カナが助けたって子と、その両親。
お客さまだし、起きなきゃ……と思うのに、身体を起こすことができなかった。
腕に力を入れようとするけど入らない。
それに気がついたのか、カナが、
「ハル。いいよ、寝てて」
と、耳元で囁いた。



