☆   ☆   ☆


「あれ? 志穂? 羽鳥先輩も」



耳に入るカナの声で、遠い昔の夢の中でゆらゆら揺れていた意識が、現実世界に呼び戻された。



……しーちゃん? 羽鳥先輩?

あれ?



今の今まで、6歳の自分のつもりだったから、

一瞬、自分がいる場所が分からなくなる。



「なに? 元気そうじゃん」

「いや。元気だって書いただろ?」

「交通事故で入院したってメールもらったらさ、普通、心配するし。

それに、ケガ人を想像しない?」

「え? 一応、ケガ人だろ?」

「どこが?」

「……あ、そっか。包帯はもう取ったんだった」

「え? どっかケガしてんの?」

「や、だから、頭。……たんこぶが痛くてさ。昨日は冷やしてたんだけどな」



カナとしーちゃんの声が右から左に抜けていく。



……ああ、そうか。

カナが交通事故にあって、入院して。



わたし、お見舞いに来て、寝ちゃったんだ。