私は五年前、魔術を始めた。

そして四年前、天涯孤独の身となった。

その原因は私であり、その時、無知な私が召喚したのは――三つ首に蛇を生やした、魔族だった。

だから私は、

「……じゃあ、ひとつ望もう」

「うむ」

ガキだ身勝手だと言われようが、

「死ね」

「ぬ!?」

悪魔族が、嫌いだ。

瞬時にポケットから、一ツ橋に見せたのとは違う呪符を取り出し、定義を言霊に付与する。

「汝、束縛の鎖、小人が紡ぎし絹糸――グレイプニル」

そして投げつけた呪符から、投網のように、純白のリボンが宙を広がる。

キマイラは、純粋な力と炎の威力を考えると、私が敵う相手じゃあない。

が、動きを封じることができれば――と思った。

そして今定義したグレイプニルなら、キマイラを捕らえられると思った。

――そんな私が、浅はか過ぎた。