† of Thousand~千の定義

大の字になって寝転んでやりたいが、腕は中途半端に斜めだし、もうそれも億劫だ。

果てしない眠気が――

「いやぁ、なんとまあ、面白いものを見物させてもらいましたな。魔法使い誕生の瞬間。いや、愉快愉快」

突然湧いた拍手と声で、一気にぶっ飛んだ。

だるいだるい首をそれでも強引に持ち上げ、足のほうへ目をやる。

雨の中、傘を差さない男が、真っ黒い服でそこにいた。

レインコートではない。修道衣だ。

「……傘は」

と的外れなことを言ってやったが、

「ああ、嫌いでしてね、傘は。手が塞がるのが、どうにも気に入らない」

「あっそ」

一ツ橋の答えも、まったくもって的外れだった。

事実、ヤツはまったく濡れていないのだから、傘は要らないのだろう。

手ぶらで、まったく、濡れていない。なんてヤツだ。そんな魔術公式、聞いたことがない。