† of Thousand~千の定義

降り注ぐ雨粒ごときで、キマイラのたてがみがジュウジュウと削られている。

文字通り命の火が消えようとしてるだろうくせに、まったくもって魔族の誇りとは恐ろしい。

未だ熱を放つ体で、路面を覆う薄い水面を蒸発させながら、私へと一歩一歩、着実に近づいてくる。

「大した、根性だよ」

「我が、敗、れ――は、……あり、えん、こと……だ」

ぶすぶすと口腔に猛火を溜め込みながら、ばしゃりと、私から少し離れたところで、キマイラは止まった。

数十センチ先で、偽りない悪魔の眼が、憎悪に爛と輝いている。

私の顔面と、獣の牙、そして炎との距離は、腕一本分あるか……。

「私を、最後に道連れにするか?」

「あり、え……っ、……こ――だ……」

「……」

しかし、ないのは距離ばかりではなく、キマイラの精神も同様のようだった。

光っている眼には、憎悪がある。

逆に言えば、それだけしかない。

つまり、私を焼いた瞬間に、この獣は死ぬ。