事情はこうだ。
ありさは店長に「オレンジ1つ」とオーダーを伝えた。
この店ではオレンジと言えば、カクテルのカンパリオレンジのことだった。
ジュースを頼む客はマレで、
オレンジと言えば、一番売れているカンパリオレンジを意味する。
それがこの店の決まりだった。
ありさは、その事情を知らなかった。
前に勤めていた店が火事で潰れ、ここに来たのは三週間前。
まだこの店に慣れていなかった。
黒服の店長が舌打ちした。
「寝かせてくる」
そう言って、うららを抱き上げ、出口へ歩いて行く。
ありさが慌てて言う。
「苦しそうですよ?
アルコールが駄目な体質なのかも…病院に連れていった方が…」
「お前は馬鹿か?
未成年に酒を出したとバレたら店が困るだろ。
確か上の階に、潰れたばかりの店がある。
そこに寝かせとく。
目が覚めたら、自分で帰るだろ」


