「まいどさまです!
おにぎり屋本舗うららです!」
元気に挨拶すると、客達が珍しいものを見るような目で、うららを見た。
ママさんのいるスナックなら、こうやっておにぎりを届けたことが何度もある。
でも、ガールズバーは初めて。
おにぎりの配達を頼むガールズバーは、確かに珍しい。
店員のありさが、うららを連れて、カウンター席の男性客に話しかけた。
その客は、40代のスーツ姿の男。
顔が真っ赤で、かなり酔っている。
その顔に、うららは見覚えがあった。
「あれ?えーと…何度かうちの店に来てくれた、お客さんですよね?」
「そうだよ〜
ここのおにぎり、めちゃめちゃ旨いって言ったのにさ〜
女の子達が、おにぎりなんかより、パスタの方がいいと言うからさ〜」
そんなことを言って、男は女性店員におにぎりを配り始めた。
どうやら、おにぎりよりパスタが好きだと言う若い女の子に、
おにぎりを食べさせ、美味しさを伝えたかったらしい。
それが、ガールズバーにおにぎり20個を頼んだ理由だった。
おにぎりを配り終えると、男は財布から一万円札を出し、うららに払った。
おにぎり20個で3千円。
お釣り7千円を返そうとしたが、客は「チップ、あげる」と太っ腹なことを言った。


