うららと梢は、手早く店じまいをし、奥の階段から2階へ上がった。
おにぎり屋の2階は住居スペース。
部屋は三つ。
どれも畳敷きの、古く狭い部屋だ。
遅い夕食を二人で食べていると、家の電話が鳴った。
うららが食べかけの箸を置いて、電話に出る。
それは“club JJ”というガールズバーから。
今からおにぎりの配達を頼めないかと言うのだ。
梢はお腹を空かせた人を放っておけない性分。
よほど真夜中でない限り、近場なら配達を引き受けて来た。
うららが店の住所を伝えると、梢は渋い顔をした。
遠くはない。
歩いて15分程の距離なのだが…
そこは連続放火事件が起きた繁華街、すすきのだった。
うららは笑って言う。
「ばあちゃん、大丈夫だよ。
放火犯は捕まったんだよ?
すすきのは夜もネオンで明るいし、人もたくさん歩いてるから平気。
私、行ってくるよ」
梢がまだいいと言わない内に、うららは注文を受け、電話を切ってしまった。
おにぎり20個が入った風呂敷は、ズッシリと重たかった。
時刻は21時半。
うららは月の輝く外へ出た。
辺りは夜の香りがする。
「気をつけて行くんだよ」
梢が心配そうに、うららを見送った。


