おにぎり屋本舗 うらら

 


 ◇◇◇


夏真っ盛り。

夜8時になっても、大気は暑さを残している。


おにぎり屋は忙しい一日を終了したところで、

うららは暖簾をしまう為に外に出た。



そこに、汗を拭き拭き走ってきた、中年サラリーマンが。



「うららちゃん、もう閉店?
あ〜、間に合わなかったか〜」



残念そうに言ったのは、馴染みの客だった。



うららは店内に向けて聞く。



「ばあちゃん、お客さん来た!
まだいいよね?」



梢は片付け終わったばかりの作業台に、再びおにぎりの道具を引っ張り出す。


それから、

「いいよ、入んなさい」

そう言って、客を中に迎えた。




単身赴任でこの街に来ている男性客は、昼も夜もおにぎり屋に足を運ぶ。


狭いカウンター席に座り、夢中でおにぎりを頬張り、

あさりの味噌汁をズズズと啜っていた。



「栄養が偏るから、これも食べなさい」


梢が出した物は、いんげん豆の胡麻あえと、根菜の煮物。

それは、うららと梢、二人の晩御飯にする予定のものだった。


遠慮する客に、

「いいから食べなさい」

と、梢は金も取らずに食べさせた。