「この二つの画像を、歩容解析に掛けます」
小泉はそう言って、歩容解析ソフトを起動した。
“歩容”とは、歩いている時の身体運動の様子。
つまり、体の揺れ、骨盤の使い方、歩幅などの、歩き方のことだ。
指紋と同じように、歩き方も個体差がある。
全く同じ歩容の人間はいないと思って良いだろう。
二つの映像の歩容解析の結果は、不一致だった。
画面に赤い文字で不一致と表示されている。
防犯カメラに映っていた放火犯と、村坂が別人であることが証明されたのだ。
SMRのパソコンの周りは、いつの間にか一課の刑事達が取り巻いていた。
ある刑事は
「白紙に戻ったのか…」
と残念そうに呟き、
別の刑事は
「村坂を叩けば、その内“秘密の暴露(犯人しか知り得ない自供)”が得られるはずだ」
と村坂犯人説を押し通そうとする。
皆、様々な意見を口にし、ザワザワと騒がしかった。
一課の長、小山内が一喝すると、刑事達は一瞬にして静かになる。
小山内が低い声で小泉に言う。
「SMRの意見は、参考として貰っておく。
村坂の取り調べは続けるが、もう一度事件を洗い直すことにする。
我々は我々の信じるままに捜査する。
君らは君らで、この事件を調べればいい」


