小泉は部下の横山の報告を聞き、捜査資料を一読した後、
「村坂は白だな…」
と、横山に同意した。
二人は取調室に向かう。
自白した村坂は、今現在も取り調べ中だった。
隣室のマジックミラー越しに、その様子を観察する。
村坂は力のない目をしていた。
何もかもどうでもいいと言いたげな、諦めの目をしていた。
彼の向かいに座る一課の刑事は、放火の詳細について質問を浴びせるが、
村坂は、
「忘れました。覚えていません」
と繰り返す。
その様子を隣室で見てから、小泉は取調室に入った。
勝手に入って来た小泉に、一課の刑事は嫌な顔をした。
小泉は、村坂の前にすすきのの地図を広げて置いた。
「村坂さん、1件目から6件目までの、放火したビルを指で示して下さい」
忘れた、覚えていないと繰り返す村坂だが、
細かなことは覚えていなくとも、まさかビルその物を忘れるはずがない。
彼が本当に犯人ならば。
村坂は鋭い小泉の視線の前で、地図上に指をさ迷わせる。
「ここ…?」となぜか小泉に聞くように示した場所は、無関係のビル。
6ヶ所のビルを指させたが、どれも外れだった。
犯人が6件の火災の場所を、一カ所も記憶していない。
こんなおかしな話しがあるはずなかった。


