杉村の冗談を、小泉は否定しなかった。
くだらないと、思っているだけだ。
一方うららは、顔を赤くしてモジモジしていた。
人生18年、色恋沙汰が全くなかったので、冗談だと分かっても照れ臭かった。
それぞれの思いの中、うららも小泉も黙り込んでいると、
二人の携帯電話がほぼ同時に鳴った。
うららは梢から。
「ばあちゃん、うん、うん、すぐ帰るね」
電話の内容は配達の注文が入ったから、戻って来いというものだ。
うららは杉村におにぎり代金を貰い、急いで交番を出て行った。
小泉の方の電話は、SMRの部下からだ。
電話の向こうで、小泉の部下が言う。
「高須が動きました。
周囲を気にしながら歩いています。
服装は、デニムに白いスニーカー、傘を差さずに紺色のレインコートを着ています。
南6丁目通りを徒歩で南下中」
小泉は「分かった」と一言言って通話を切る。
雨の中、傘も差さずに出て行った。


