携帯電話をスーツの内ポケットに仕舞った時、玄関でインターホンが鳴った。


知本が出る。

ドアを開けると、

「まいどさまです!おにぎり屋本舗うららです!」

と元気な声がした。



「小泉警部、おにぎりなんて注文しましたか?」



知本に聞かれ、小泉は玄関に姿を見せた。


うららは驚いて言う。


「怖いけど、親切で私を助けてくれたお巡りさんだ!

ここ、お巡りさんのお家ですか?

おにぎりの注文、ありがとうございます!」



「またお前か…

おい、おにぎり屋、ここは俺の家じゃないし、俺はおにぎりは頼まない。
サンドイッチ派だ。

配達先も間違えてるぞ。
ここの部屋番号は、202だ」



「202?えっと…配達先は…あ、203だ。
間違えちゃった、ごめんなさい」




うららはペコリとお辞儀してから、慌てて出て行った。


小泉は呆れながらドアを閉める。


鈍臭い娘だ…頭の中でそう思った時、

さっき写真の少女を見て
「何かが引っ掛かる…」
そう思った理由が分かった。



写真の少女は、被害者の少女時代と言うよりは、おにぎり屋に似ている気がした。



数秒間、頭の中で顔を見比べていたが、すぐにくだらないと首を横に振った。



他人の空似。
よくある話しだ。



―――――…