「姫様っ
暴れないで下さい…くっ…」
男はうららを落としそうになり、肩に担ぐように抱き直した。
廊下の奥へ向かっていた杉村が、足を止めて振り向いた。
その目と、うららの目が合う。
うららは杉村を見つけて、助けに来てくれたと勘違いした。
「おっちゃん!知らない人が…助けて!」
うららは必死に手を伸ばし救いを求めたが、
その手を取られることはなかった。
数メートル先で、杉村はニッコリ笑った。
「うららちゃん、いや…あなた様はアバタリ様に戻られたのだ。
ここが本当の居場所ですぞ、安心なされ。
我が家に帰れて、良かったですな」
ニッコリと笑うその顔は、見慣れたものであった。
梢のおにぎりを食べる時、杉村はいつもそうして笑っていた。
同じ笑顔でも、今の杉村はうららの知っているお巡りさんではない。
それに気づく。
うららの顔が青ざめた。
背中に冷汗が流れ、体が小刻みに震え出した。


