幹部希望の杉村に、丸山陽子は曖昧な答えを返す。
「アバタリ様がお戻りになられたので、今後に関しては私の一存では決められません」
杉村は真顔になる。
冷たい目を、丸山陽子に向けている。
丸山は、杉村を見ていなかった。
目線は眠るうららに。
歩み寄り、愛しそうに頬を撫でてから、後ろの男に指示を出した。
彼らの一人が、杉村の腕からうららを受け取る。
もう一人は、杉村をどこかへ連れて行こうとしている。
杉村の腕から離れたうららは、うっすら目を開けた。
薬の効き目が切れたようだ。
目を擦り、キョロキョロと辺りを見回す。
自分を抱き上げている男と目が合い、「キャア」と悲鳴を上げた。
男は10年前からアバタリを知っているが、
うららに教団の記憶はない。
見知らぬ場所に、見知らぬ人々。
暗い廊下を照らすオイルランプも不気味に思えた。
目覚めた途端に、驚きと恐怖が一度に押し寄せた。


