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湯傘が死刑に処された日の、夜8時半。
小泉は肩に雪を積もらせ、SMRに帰って来た。
コートを無造作に椅子の背にかけ、どっかり座り込む。
溜息と共に疲労を吐き出すと、部下の横山が熱い珈琲を出してくれた。
「室長、上手くいきましたか?」
「どうだろう。注意事項に頷いてはいたが…
桜庭うららは、どこか抜けているからな。
俺から貰ったと、うっかり言ってしまう懸念は消せないな…」
小泉は今さっき、おにぎり屋の前でうららと会っていた。
目的は誕生日プレゼントを渡す為ではなく、
彼女にGPS端末を取り付けるためだ。
ネックレスの桜のイミテーション内部には、超小型GPS端末機が埋め込まれている。
彼女の位置情報は、随時SMRのパソコンに送られる仕組みになっていた。
そんな物を付けなけばならない理由は、湯傘の処刑だった。
教祖の死刑執行で、隠れていた信者達が動き出す恐れがある。
教祖亡き今、信仰の対象は娘のアバタリしかいない。
小泉は、いずれ狙われるであろうことを予想して、
うららの首にGPS端末を取り付けたのだ。


