フリーライターの男は、膨大な文通で掴んだ湯傘という人間について語った。
その後、
『もう一つ、お伝えしたいことが…』
声の調子を変えて、重々しく言った。
彼は一通の封筒から、手紙を取り出す。
それをキャスターに渡して、
『裏を見て下さい』
と指示した。
女性キャスターは言われた通り、手紙の裏を見た。
そこには、真ん中辺りに鉛筆を掠ったような微かな点が打たれていた。
『これが、何でしょう?』
キャスターは訝しげに聞く。
男が、すりガラスの向こうでニヤリと笑った。
『手紙を透かせて見て下さい。
薄く点が打たれた所の、表の文字が分かるでしょう?
その手紙で印がついていたのは“我”という文字。
それを始まりとして、毎週やり取りした手紙には、必ず一ヶ所、印がついていました』
獄中の湯傘には、信者達に伝えたい言葉があった。
それを、このフリーライターの男に託していた。
一度の手紙で一文字ずつ、
慎重に伝えた言葉を繋げると…
男は得意げだ。
自分しか知らない情報を伝えるのに、快感を味わっていた。
たっぷりと間を開けて、
彼は湯傘の残したメッセージをゆっくり読み上げた。
『我 の ムスメ アバタリ
ムスメ の 腹から 我 蘇らん
同士よ 蜂起 せよ』


