◇◇
時刻は午後2時を回り、
おにぎり屋の忙しさは一段落していた。
うららは昼前に病院から帰り、今は交番におにぎりを届けに行っている。
梢は客用の椅子に座り、
テレビを見て休んでいた。
そこに若い男の客が来た。
新顔の客は黒いスーツを着こなし、やけに整った顔をしている。
無言で入り、鋭い視線で店内を見回していた。
梢はよっこらせと立ち上がり、
「あんた刑事だね?」
と聞いた。
客は小泉だった。
刑事だと言い切れる物は、身につけていないつもりでいた。
梢に言い当てられ、小泉は幾らか驚いている。
梢は笑いながら、調理場に立つ。
おにぎりを握る準備をしながら、理由を言った。
「入って来るなり、そんな目で見りゃ、すぐに分かるさ。
これでも刑事の妻を、40年やったからね」
小泉がカウンターの椅子に座ると、
「ばあちゃん、ただいまー!」
と、うららが元気に帰って来た。


