消防車のサイレンの音が聞こえていた。
もう間もなく到着するだろう。
だが小泉は、消防の到着を待つ気はなかった。
待っても無駄なのだ。
この窓は隣のビルとの狭い隙間に面している。
狭すぎて、ここに消防車のハシゴをかけるのは不可能だ。
加えて、待っている時間もなさそうだった。
ドアの隙間や換気孔から、少しずつ煙りが侵入していた。
部屋が致死量の煙りで満ちるのは、時間の問題だった。
小泉は部屋の中を見回す。
カウンターテーブル上に、荷造り用のビニール紐とガムテープが置いてあるのを見つけた。
ビニール紐で二人分の体重を支えるのは厳しいが、今はこれしかない。
小泉は頼りないビニール紐を長く伸ばした。
4本を束ねて強度を上げ、ロープを作る。
それを窓に持って行った。
長さは少し足りないが、仕方ない。
下りられる所まで下り、後は飛ぶしかない。
小泉は肘で窓ガラスを割った。
窓枠にロープをくぐらせ、固く結ぶ。
何度か引っ張り強度を確かめてから、うららの側に寄った。


