6階フロアを反時計回りに見て歩き、このフロア最後の店まで来た。
階段から近い位置にあるその店は、
“スナック紫陽花”と看板を掲げていた。
ドアには『都合により閉店しました』と貼紙がされている。
小泉がドアを引くと、カギは掛けられていなくて、スムーズに開いた。
閉店の店…
カギの掛けられていない店…
小泉は何かを感じ、中に入りドアを閉めた。
真っ暗な店内は、煙りのない空間だった。
閉め切られていた為、空気は淀んでいるが、
煙りがないだけ、随分マシに思えた。
小泉は肺を大きく膨らませ、体に酸素を取り込んだ。
数回深呼吸してから、注意深く辺りを見回した。
カウンター、椅子、食器棚、ソファー、テーブル…
暗がりの中に、スナックらしい部屋の様子がぼんやりと見えてくる。
小泉は奥のソファーに近づいて行った。
ソファーの上に何かが乗っていた。
近づくにつれ、それが横になっている人間だと分かるようになった。


