小泉は踊り場の窓を開け、下を覗き込んだ。
まだ朝日が昇らない暗い中を、ビルから飛び出した五十嵐が逃走するのが見えた。
小泉はすぐに、部下の横山に電話をかけた。
「俺だ。火をつけられた。
至急消防に連絡。
五十嵐は二瓶ビルを出て、5条通りを東に向け逃走中。
途中で車に乗られたら厄介だ。
SMRの人員では足りない。
捜索一課を叩き起こして、緊急配備しろ」
「了解。室長は?」
「俺は…人捜しだ。
行方不明の女が、このビルにいる可能性がある。
今すぐ見つけないと…焼死だ」
小泉は通話を切ると、階段を駆け上がる。
閉まり切らない防火扉の隙間から、灰色の煙りがモクモク階段に立ち上る。
上の階は特に危険だ。
火が回る前に、一酸化炭素中毒で死に至る。
スーツの袖で口元を覆っても、小泉は激しくむせ込んだ。


