「...だな。
恵舞の前なら、俺...」

「ん?」

少し潤んでいる恵舞の目を見つめる。

「俺...
ほんとは弱いんだよ。
だから、恵舞の前では俺になりたい。
俺そのままでいたい...」

「それでいいんだよ」

小さい頃から大人っぽかった恵舞。

「大人ってね、つらいの。
悲しみを心の中にしまいこまなきゃいけないの」

悲壮感たっぷりに、そう言う。

「じゃぁ、恵舞の解放の場は、俺だ」

「えっ...」

恵舞の瞳が揺れる。

「...悠、何か辛いことあったんでしょ。
それ、隠し通したんでしょ」

「...どうかな」

「ふふっ、強くなったね。
そういうことがないと、人の痛みはわからないから」

そう言って、

「悠だけは、ちゃんと私のことわかってくれる。
...小さい頃から」

そんな嬉しいことを言ってくれた。