「お兄ちゃん、いーこーうーよー!」

「はいはい、今行く!」

呆然と立ち尽くしていた俺に、珠梨が手招きする。

「珠梨がいるしな。
別に平気かな」

俺たち兄弟の絆は、けっこう強かった。

少し走って受珠梨に追いつく。

「ねぇお兄ちゃん?
ワンワンいる〜!」

嬉しそうに俺の手を引っ張る。

「ねぇ〜触りたいの〜
珠梨ワンワンとお話ししたいの〜」

完全に駄々っ子だ。

「はいはい。
飼い主さんに聞きに行こうね」

木に隠れて見えないけれど、誰かがその犬を連れて来ているらしい。