俺と公一は、店を出たがしばらく無言だった。


さっきの興奮を上手く言葉に出来ないのだ。


しばらく歩いて公一が、すげえなと一言いった。


俺もすげえなとだけ返した。


凄い物を感じた時に言葉は無力になる。


話せば話すほど、現実に起こった事とずれていきまるで違う物に変質してしまうようで俺達は、マラカスの男の事を話すのは辞めた。


俺達は興奮を冷ます為に女を買いに行った。



俺は、その日に抱いた女の背中に見事な鷲のタトゥーが、入っていたが、特に驚きもなかった。


行為の間中マラカスの音が響いてるような気がした。


公一も、女に夢中にはなれなかったようで、参ったなと笑っていた。


あれから十年以上たったが、今でも何かの時にスイッチが入ったように思い出すのだ。


オリオンビールとジョニーウォーカーと島酒の匂い。


店の中の煙草とマリファナの匂い。


ブーツで蹴りつけた男の感触。


そしてマラカスの男を。