「そんなことより、こっちはどう?変わったことはない?」


平助くんが聞く。


「うん、そうだな……」


あたしは平助くんに、街の様子を簡単に説明した。


京の街はまだまだ復興中であること。


長州軍が撤退したと同時に、悪さをするもののけや、それに取りつかれた浪士も少なくなっていること。


「一時的に、だろうけどね」


「いつ帰ってくるかわからねえな。敵は長州一藩ってわけでもねえし」


あたしと総司の話を、平助くんは神妙な面持ちで聞いていた。


「そっか……。ところで……あのさ。

山南さんはどんな感じ?」


うなずいたあとで、平助くんは声を殺して聞く。


「腕は……良くなってねえみたいだな」


難しい顔で、総司がぽつりと言う。


「伊東さんが来て、どう?」


「うん、なんか難しい物語のことを楽しそうに話しているのを見たけど」


たしか、『三国志』だっけ?


副長に言われた任務のことは言えないけれど、あたしは伊東先生に見つからないようにその様子を探っていて、偶然そんな光景を見た。